適合レベル
AA
※各レベルについては適合レベルとはをご覧ください
概要
スマートフォンなどの狭い画面でも、横スクロールが発生することなく、すべてのコンテンツが閲覧・操作できるようにする(リフロー)。
具体的な実装方法
1.4.10 AA
1. ⭕️良い例
レスポンシブウェブデザインの手法を用いて、コンテンツがビューポートの幅に応じて柔軟にレイアウトを変更できるように実装します。
ポイント
- 相対単位の使用: コンテナの幅や文字サイズに、パーセント(
%)、vw、em、remなどの相対単位を使用します。 - リキッドレイアウト: ビューポートの幅に応じて、コンテンツの幅が流動的に変わるレイアウトを採用します。
- メディアクエリ: 特定のブレークポイント(例:
320px)を設定し、その幅になった際にレイアウトが1列になるようにCSSを調整します。 - フレックスボックス (
display: flex) やグリッドレイアウト (display: grid): これらのCSS機能を利用すると、柔軟でレスポンシブなレイアウトを容易に構築できます。
実装例 (CSS)
/* コンテナの最大幅を設定し、中央に配置 */
.container {
max-width: 1200px; /* PCなど広い画面での最大幅 */
width: 90%; /* ビューポート幅の90%を基本とする */
margin: 0 auto;
}
/* 画像がコンテナからはみ出さないようにする */
img {
max-width: 100%;
height: auto;
}
/* 画面幅が狭い場合は、フレックスボックスのアイテムを縦に並べる */
.flex-container {
display: flex;
}
@media (max-width: 768px) {
.flex-container {
flex-direction: column; /* 画面幅が768px以下で縦積みにする */
}
}2. ❌悪い例
固定幅のレイアウト
- コンテナや主要な要素の幅をピクセル(
px)で固定している。
<pre> タグの不適切な使用
- 本来は整形済みテキストを表示するための
<pre>タグを、レイアウト目的で使用している。<pre>タグ内のテキストは自動で折り返されないため、水平スクロールの原因となります。
幅の広いコンテンツ
- サイズの大きい画像やデータテーブルが、何の対策もなしに配置されており、画面幅を狭めるとはみ出してしまう。
なぜ問題なのか
これらの実装は、ブラウザの表示領域を狭めたり、ページを拡大したりした際に、コンテンツが自動で折り返されず、水平スクロールバーが表示される直接的な原因となります。
改善策
- 固定幅の指定を
max-widthに変更し、width: 100%などを併用する。 - データ量の多いテーブルは、レスポンシブテーブルのデザイン(例:列を縦に並べ替える、横スクロール可能なコンテナで囲む)を検討する。
3. プラットフォーム別の実装
Webページでは、レスポンシブウェブデザインの原則に従い、HTMLとCSSを組み合わせることで達成します。特別なWAI-ARIAの技術は通常必要ありません。
4. 特殊なケースへの対応
二次元のレイアウトが必要不可欠なコンテンツは、この達成基準の例外となります。
例:
- 地図
- 複雑な図版やダイアグラム
- データテーブル(多数の列と行を持つもの)
- ビデオ編集ソフトのタイムラインのようなUI
注意
データテーブルが例外に該当する場合でも、テーブル全体を横スクロールできるコンテナ要素で囲むなど、ページの他の部分がリフローの要件を満たすように実装することが重要です。
確認観点
1.4.10 AA
1. 定量的な基準の担保
ブラウザのズーム機能による確認
- PCのブラウザでウェブページを開きます。
- ブラウザの表示を**400%**に拡大します。(ショートカットキー:
Ctrl++/Cmd++) - この状態で、テキストコンテンツを読むために水平スクロール(左右のスクロール)が発生しないことを確認します。
ブラウザのデベロッパーツールによる確認
- デベロッパーツールを開きます。(ショートカットキー:
F12orCtrl+Shift+I/Cmd+Option+I) - デバイスモードを有効にし、ビューポートの幅を 320px に設定します。
- この状態で、水平スクロールが発生しないこと、またコンテンツや機能が失われていないことを確認します。
2. 定性的な基準の担保
レビュー
- CSSコードレビューで、
widthに大きなピクセル値が固定で指定されていないか確認します。 - レスポンシブデザインのベストプラクティス(メディアクエリ、相対単位の使用など)が適用されているかを確認します。
専門家による監査
- アクセシビリティ専門家が、実際に様々なデバイスやズームレベルでコンテンツを閲覧し、情報の損失や操作不能な機能がないかを評価します。
- 例外的に二次元スクロールが必要なコンテンツが、利用者にとって本当に「必要不可欠」であるかを判断します。